21 March '2004 - 22:18 | 雑記 遠慮
今日から二週間ちょっとの間、日本からの客人が我が家に滞在する。昔からの友人の息子だ。先日、小学校を卒業したばかりの十一歳が一人でアメリカまで来るというのだから大したものだ。六年生の時の自分を思い出しても、おれにはとてもできたとは思えない。 彼にとっては生まれて初めての外国体験になるのだから、いろいろと思う存分に楽しませてやりたい。とりあえず、どんなことをして喜ばせてやろうか。何週間も前からあれこれと考えてはいるが、相手はしょせん十一歳の子供だから結構難しい。おれの友人なら、ストリップバーとか国立公園とかジャンクフードとかストリップバーとか、まぁ、攻めようはいくらでもあるのだが、相手は子供だからなぁ。だいたい、酒が飲めないってのが困る。夜とか、バーとか連れて行ってやろうにも十一歳じゃ話にならん。
まったく、何しに来るんだよ。子供じゃなくて、親父が来てくれよ。おれが楽しいから。って、そういうことじゃないか。
ま、いろいろと悩ましいところではあるが、何はともあれ、日本でも報道されているスーパーサイズは体験させておきたい。スーパーサイズがあるうちに来てくれてよかった。子供でも、日ごろ見ている日本の小さいサイズとは異次元のアメリカのサイズに度肝を抜くってのは分かりやすくて良いだろう。あと、そういう系としては、6 Dollar Burger とかも食わせてやろう。ウマイしデカいし、びっくりするだろうなあ。
が、そんなおれの思いを踏みにじるかのような予想もしていなかった事件が、今朝、起きたのだった。
サンフランシスコ国際空港に出迎えに行き、その帰りの車の中でのできごとだ。
アレルギーとかあるといけないから、念のために、何が好きか、嫌いか、食べられないものはないか、などを訊いたら、なんと彼はあろうことか、肉はあまり好きじゃないと言う。鶏肉とかはあまり食べないだと。煮物とか好きだと。
おいおい、これから二週間、何を食わせればいいんだよ。アメリカだぞ、ここは。狂牛病も鳥インフルエンザもないんだぞ。いや、ほんとはあるかも知れないけど、だれも気にしてないんだぞ。そんな肉好き天国で、肉が好きじゃないってお前、いったい何しに来たんだよ。子供のくせに、何が煮物だっての。
うーん、しかし、困ったなぁ。女房と二人で途方に暮れつつ、対策を練った。とりあえず巨大ハンバーガー系度肝抜き計画はおじゃんだ。今までアメリカに遊びに来た全ての友人が大喜びした、一撃必殺のハンバーガー作戦だったのに。
おれと女房は意気消沈しつつ、まずは無事に着いたことを連絡するために日本に電話した。そしてお母さんに彼の好きなもの、いつも食べさせているものを聞いてみることにした。
すると予想外の事実が判明した。なんと、彼は肉が大好きどころか肉しか食べない肉野郎だという。肉肉野郎だという。肉専門店だという。肉十八だという。そこまでは言ってない。が、とうぜん煮物なんて渋いものが好きなわけがないらしい。
これには電話のこっちと向こう、アメリカと日本で爆笑してしまった。
ていうか、おまえ、どういう遠慮やねん。遠慮するなら、肉しか好きじゃないって方向に遠慮しろよ。アメリカなんだから。
ま、しょせん十一歳の遠慮というのはこういうレベルなんだな。子供のころ、子供は遠慮なんかするな、ってよくオジサンたちに言われたのを思い出す。それは、こういうことも含めてなんだよな。
おい、おまえの母さんは、おまえの好物は肉だって言ってるけれど、肉は好きじゃないって言うおまえの言葉をおれは信じるから、これから二週間、いっさい肉は食わせないから安心しろよ。いや、覚悟しておけよ。いじめてどうする。