06 June '2005 - 22:56 | アメリカ生活, 美食 菓子開拓と敗戦処理
人生、負ける可能性が圧倒的に高いと分かっていても勝負しなくてはいけない時がある。 男であろうと女であろうと。アメリカに住んでいて、避けては通れない勝負のひとつに新しいお菓子の開拓がある。たとえそれが美味しそうにみえようと不味そうにみえようと、食べたことのないお菓子から意気地なしと嘲笑されて黙っているようでは、男も女もすたるというものだ。
ここんところ何ヶ月か戦いらしい戦いをしていなかったので実戦の勘が鈍っている気もしたが、先週末に Trader Joe's で買い物していた時、今回の挑戦者、Chocolate Pineapple Sticks が音も立てずにエントリーしてきたのをおれは見逃さなかった。
うぉっ、この菓子、なんか、うまそう… いや、きっとまずいに決まってる… っていうか、まずそう… それでいて、うまそうすぎる…
ここだけの話、おれは大のチョコレート好きだ。当然ながらダークチョコ派。美味しいダークチョコさえあれば、後は何もいらない。あまりに好きなので、ご飯にチョコレートをかけて食べてみたことだってある。ない。でも、案外うまくてびっくりした。だから、嘘だって。
そして、おれの一番好きなフルーツは何を隠そうパイナップルときたもんだから、たまらない。はっきり言って、勝ったも同然。
思わず手に取り、念のために注意深く観察してみるが、とくになんとも書いてないので、どういうタイプの敵なのかはさっぱり分からない。右往左往して困っていると、そんなおれの心を見透かすかのようにやつは冷たくつぶやいた。「悔しかったら食べてみろよ。ふっ」
く、悔しい。一体、どんな味なのだろうか。パイナップル風味のチョコレートなのだろうか。それともパイナップルの粒がはいったチョコレートなのだろうか。それとも、一体…
ここで勝負を避けたら一生後悔するのは目に見えている。勝負というものは、挑戦されたら受けて立つしかないのだ。
高ぶる心を沈め、自宅までの帰路、戦い方を何度もシミュレーションしてみるが、パイナップル風味のチョコなら、ぜったいにおれの勝ちは揺るがないと自信を深める。しかし、今まで、なんどこうやって戦い敗れてきただろうか。もしかして、また、今日も負けるのだろうか。
そして、自宅に着くや否やその激しい戦いは始まり、予想通り、勝負開始の笛が鳴り終わる前に、その勝負は決していた。
な、なんと、チョコはまわりをコーティングしているだけで、中身はパイナップル味のゼリーであった。なんなんだ、それは。チョコ系の戦いを想定していたのに、ゼリー勝負かよ。
そもそも、Pineapple Chocolate Sticks ではなく、Chocolate Pineapple Sticks という名前に勝負のヒントは隠されていたのに、それにまったく気づかなかったのが最大の敗因だ。そこに気づいてさえいれば、負けるにしても、傷は浅くすん だのに。
結局おれは一粒で完敗を認め、女房に勝負を託した。しかし、女房も一粒で完敗を認めた。まわりのチョコはダークで美味しいのに…なに、これ… と。
夫婦そろって完敗。たぶん、我が家の菓子開拓戦の勝率は 1割を切る勢いだろうと思う。
が、しかし、我が家には秘策がある。菓子開拓の敗戦を必ず勝利へと導く、最高の戦略をちゃんと用意してあるのだ。
非常に難しい理論なので簡単な説明はそもそも無理だし、言っても素人には理解できないのだろうが、そこkをあえて端的に説明するならば、こういうことだ。つまり、この菓子を職場のキッチンの真ん中に放置するわけだ。
今日の 1時過ぎ、誰もいないキッチンにこっそりと偲び入り、お茶を入れる振りをしながら、PostIt に 「HELP YOURSELF」と書いて、おれはこの罠をそっと仕掛けた。
3時ごろ、お茶を入れる振りをしながら網の係り具合をみたら、すでに 1/3 くらいが減っていた。そして、6時ごろ、もう一度確認をしてみたら、そこには空っぽのハコと、ブツを美味しそうに食いながら談笑するガイジンたちがいた。
またしても完勝。菓子開拓敗戦処理の勝率は 10割。
日本からお土産として持ってきた本当の意味で美味しいお菓子を、職場の連中に少しでも分け与えてしまうのは、本当に本当に勿体ないと思ってしまうのも無理はない。
davilin () (ウェブサイト) - 07 June '2005 - 04:58
ベイエリアには日本の菓子を喜んで食べるガイジンもたくさんいますが、たいていは死ぬほど甘すぎなフロスティングとかも喜んで食べてるんで、舌ではなく知識で美味しいと言ってるだけなんだろうな、って疑ってます
ちなみに、どこで読んだか忘れましたけど、手作りケーキをパーティに持っていっても、砂糖の量だけは日本のレシピの倍にしないとまったく売れないって書いてる人がいました。甘すぎれば甘すぎるほどいい、と。
ひろしま () - 07 June '2005 - 22:45
なかの - 08 June '2005 - 14:19
5年くらい前、なかのさんの上司が何気にふつーに食べてるのを見て、さすがだなあ、アメリカ人には勝てないなあと物凄く感心したんだよね。おれは、まだそのレベルには到達できてないんだけれど、ゼリー専門家ならもしかして有利なのかなと思って。
ひろしま () - 10 June '2005 - 09:49