07 December '2005 - 23:39 | アメリカ生活 世界一の医療…の実際
実は、前のエントリは、何故か途中で切れてしまっていた。 しかし、書いたものがどこにも残ってなかったので、諦めて切れたところから何を書いたか思い出して書き直していたら、なぜか、最初に書いたものの何倍もの長さになってしまった。ので分けることにした。前のエントリでは、さすがにいいことばかり書いたので、今回は日本教徒の溜飲を下げることも書かなくてはいけない。とは別に思わない。おれはアメリカ教徒だし、日本最高という話を読んで安心したい人は、こんな落書きなんて読んで時間を無駄にするよりも、在米邦人系ブログの多くはそれ系なので、そちらをお求め下さる方が得策なのは言うまでもない。
まあ、ある種の事実をあえて書かないことで印象操作をしたいという意図もまったくないので、以下に、おれが体験した、世界一の医療現場の実際を紹介する。
たとえば、こんなことがあった。
ちゃんと時間を予約して行っているのに、待合室で1時間近くも待たされたあげく、診療室でもさらに30分近く待たされたことがある。これはさすがに酷すぎる例だが、それほど驚くには値しない。こんな状況でも、明鏡止水のごとく静かに待ち続けられる、成熟した大人として行動できるか否か、それが試されているだけのこと。5分待たされただけで簡単に激昂するような「客は神様」根性は、アメリカでは何の役にも立たない。
こういうことがあったら、まず、平然と医者に事情を聞いてみて、どうしても優先しなくてはいけない不測の事態が発生していたというような、それなりに納得できる説明をもらうことに努める。もしも、受付が間違ってオーバーブックしてしまったみたいな、くだらない理由だったら、その医者のところにはもう二度と行かないことにするだけ。ちなみに、専門医やまともな医者なら、あんまりこういうことはないけれど、往々にして受付というは、ほんとどうしようもない人たちがやっていたりもするので、気を抜いてはいけない。
ちなみに、アメリカのフォーラムなどで医者の評判などを読んでみると、医者は最高だったけれど受付が最悪、という類の話はごろごろしていて笑う。
それから、こういうこともあった。。
おれの保険が全部カバーするということを、医者と保険会社に確認してから行った手術なのに、あとで 2500ドル請求されたということもあった。とはいえ、この場合もまったく驚くには値しない。ああ、またか… とため息をつきつつも、アメリカ在住資格更新テストの時期がやってきたのだな、と理解するだけだ。
なんて偉そうにいっているが、実はこれはかなり凄かった。というのも、まず、請求書に書かれたところに電話して状況を説明してみたら、すぐに確認するというので安心していたら、翌月もまったく同じ請求書が来た。仕方ないので、先月とまったく同じ確認作業をしてみると、今度は大丈夫だという。が、当然ながら、その次の月も同じ請求書が届いた。さっさと 2500ドル払えよ、と。
さすがにちょっと凹みつつも、かといって黙って払うわけにもいかないので、手術前に言質を取ってある執刀医に直接電話で確かめてみると、新たな事実が判明。請求書は、執刀医の方から直接きているものではなく、別の医療グループから来ているものだということが分かった。つまり、請求元に問いただしても、そこから、執刀医の所属する医療グループに問い合わせが行って、そこから執刀医のグループに行くというような経路をたどる。
つまり、この話はそもそも一度も執刀医にまで行ってなくて、請求元に話が戻ってくる前に次の請求書が発行され続けていた。
面倒くさいので、ちゃんと処理しておいてくれと執刀医に頼むと、この件はちゃんとやっておくから安心してくれと言うので、素直に安心していたら、その翌月、また請求書が来た。いいから、2500ドルさっさと払えって、まじで、と。
こうなると、やってもないのにぼくがやりましたと自白して楽になりたいというような自白心理が働いてくるわけだが、これも試験の項目であるということを忘れてはいけない。諦めて2500ドル払った瞬間に、ブーとブザーが鳴って、隣の部屋から教官がぞろぞろ出てきてその場で試験は終了。不合格、ということになる。
とにかく何があっても諦めるわけにはいかないので、保険会社も含めて、すべての関係部署に最初からくまなく連絡して、場合によっては電話相手の上司などと話をさせてもらったりして、手術前から現在に至るまでの状況を、事細かに説明し、全ての問題をクリアして、全員からちゃんとおれの言ってる方向で解決するとの言質を取って、やっと安心できた。
と思いきや、次の月もちゃんとお印は来るわけです。もうね、毎月来るわけです。おま、まじ、2500ドル、さっさと払えや、ゴルァ、と。生理ならいいけど請求書ですからね。まさに天国と地獄。
で、もう一度、前の月に話した人たちにひとりずつ電話してみたら、先月話した何人かの人はバケーションでいなかったりして、当然、話は引き継がれていないわけで、説明をやり直しさせられることになった。さすがにこんだけ鍛えられたら、いやでも英会話力が上達するというものです。本当にありがたいことです。
そうこうしてるうちに、遅延料金も払えって言ってくるし、いい加減、もしかしたら結局は払う羽目になるのかも知れないなら、さっさと払った方が得なのかも…って気になってくる。そもそも、おれが勘違いしていただけで、最初から払わないといけないって話だったのかも、とかね。
結局、この戦いは半年以上も続いて、当然のごとくおれの全面勝利で幕を閉じるわけだが、この戦いを最後まで勝ち抜いて合格証書を手にした時の達成感と言ったら、本当に言葉にできないくらい感慨ひとしおだった。教官と抱擁して涙を流したのを思い出す。ま、こういうことを経て段位を着実にあげているからこそ、盗難車試験にも難なく合格できるわけですね。ほんと、アメリカの皆様には感謝しても感謝し足りないな。
つまり、アメリカが優れているのはシステムそのものであって、決してそれを運用している人たちではない。合衆国というのは合州国ではなく、烏合の衆の国という意味なのだから、推して知るべし。烏合の衆で運営しないといけないからこそ、システムがより優れているともいえるのだが、とにかく、日本よりも格段に進んだ医療システムであっても、アメリカ人が運用するとやはりいろいろとある。ほんと、明治の人はうまいこと漢字を当てたものだな。
弱者を容赦なく切り捨て、市場原理による革新を世界一の速度で進めているアメリカの医療システムは、人類の医療技術の進歩に絶大なる貢献をしているわけだが、アメリカの消費者が日常的に体験する世界は、所詮は烏合の衆システムのレベルを超えないし、それに付き合っていると英会話力も上達する、と。
うーむ。
davilin () (ウェブサイト) - 08 December '2005 - 05:07
Family Practice で人気のあるところは、予約を午前中にしないと待たされる確率が高い感じですが、それでも30分以上待たされることは滅多にないですよ、私が使ってるところでは。あと、最近ときどき使ってる新しい医者のところでは、いつも待ち時間5分。つぶれないことを祈ってます。
やはり、選択肢がある場合は、待たされすぎるところには行かない、これですね
ひろしま () - 10 December '2005 - 10:24