ぼんやりと考えている人

ひろしまなおき (廣島直己)
名前: ひろしまなおき (廣島直己)
住処: シリコンバレー
職業: しがないプログラマ
家族: 愛妻一人、息子一人、娘一人
道具: ハーレー二台、ギター三本
電紙: n at h7a.org

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11 September '2006 - 21:32 | 単車と旅 Sturgis 2006 (その10)

旅の十日目、八月十四日。月曜日。

八時、起床。天気は悪くない。いい感じ。だらだらと準備を済ませる。

準備が終わってのんびりテレビを観ていると、だんだん体も起きてくる。腹が減ってきた。でも今日は九時出発の約束だし、もう少し我慢する。

九時、予定通り出発。

さ て、朝は何にしようか。と思ったら、Y と H ちゃんはすでに朝食は済ませたらしい。九時には朝食も終わった上での出発だと思っていたのか。それは申し訳なかった。ていうか、こっちは九時までは何も食 えないと思って我慢してました。おれも C も腹、ペコペコです。謝るのはそっちです。

何かないかとのんびりと Sheridan の町を走る。町の外れにマックを発見。そうとなれば、贅沢に朝マックが定跡。やはり、町はいい。なんでもある。

オーダーは言うまでもなくソーセージ・エッグ・マフィン。しかし、C は頑固にグリドルズを注文。なんど食べたって、おいしくないものはおいしくないのに。ほんとうはソーセージ・エッグ・マフィンを食べたいはずなのに、「そんなもん日本にもあるし、こっちの方がウマイんだって。無理せんと、食べてみたらええが。でらウマいって。食べたいくせに。」と、あくまでも強がる。それはこっちの台詞だっつの。

朝はとっくにすませている Y と H ちゃんは、コーヒーでも飲んで待ってるのかと思いきや、H ちゃんはパンケーキを注文。朝食を取ったのに、まだ食べるのかよ。ぜんぶは食べられないから良かったら食べてというので、おれのことを許したというメッセージだと理解。喜々として一枚もらうことにする。

十時前、出発。今日は、イエローストーンまで 250 マイル (400km) ちょっと、US-14/16 をひたすら西進するだけなので考えることもない。

山道をどんどん登り、コーナーを攻める。気持ちいい。

US-14: 山道 in Wyoming

途中、US-14 から US-14A に乗り換える。US-14 でもいいのだけれど、地図に寄れば US-14A の方が Scenic Route をあらわす緑の点の部分が多いので、Alt の方を使うことにする。Scenic route rules だ。

十二時、Lovell に到着。ガスの補給。まだそれほどおなかも空いてないので、次に進む。

一時、Cody に到着。なにはともあれ昼飯だ。町のメインストリートを流していたら、Daily Queen があった。みたらハンバーガもやっていたので入ることにする。

実は、おれはその時まで Daily Queen でハンバーガーが食える店もあるということを知らなかったのだが、48州すべてをハーレーで旅して回った C は知っていた。C がいなかったら、Daily Queen は素通りしていたに違いない。

飯を食って外に出ると、となりに止めてあった車のナンバーをみて C がおれに聞いた。「Show Me State」ってどういう意味?

「ミズーリ州は大ぼら吹きが多い土地だから、『そんなにえらそうに言うならショウミーしてみずーり』ってみんなが言うってことだろうね。ぜんぜん知らんけど。」

おれの説明では何故か納得できなかった C は、Y に同じことを訊いてみる。Y は、そういうことはご当地の人に訊くのが早いとばかりに、助手席に座っていたおばちゃんに訊いてみる。

結局、そのおばちゃんはおれが言ったことと同じことを言っただけで、おれの説が正しいこと、もしくはそのおばちゃんも知らないというが証明されただけだった。C はその説明で納得はしたようだった。

が、Y とおばちゃんの会話はそれだけでは終わらずに、もっと重要な情報を我々に告げることになる。

そのミズーリのおばちゃんは、おれたちが今まさに向かっているイエローストーンから帰っている途中で、これからおれたちが走る予定だった US-14/16 の状況を詳しく教えてくれたのだ。

なんと、彼らはイエローストーンから脱出するのに二時間もかかって大変だったという。あと 60マイル (96km) 程度で到着する予定のイエローストーンなのに、その道は工事で大渋滞しているらしいのだ。うーむ。

かなり計算外のできごとだが、訊いておいて良かった。二時間もかかるならコースの変更を検討しよう。Cody からイエローストーンへのルートは、US-14/16 でど真ん中に入るルート以外にもうひとつ、WY-120 から WY-296 を通って北側から入るルートがある。

距離はだいぶ伸びてしまうし、結局、到着には二時間くらいかかりそうだけれど、北から入れば一周しやすくなる。また、公園内で走る予定だった、北上の 30マイル (48km) くらいが自動的に解消されることになるし、北ルートを取る意味は十分にある。

片側交互の渋滞で一時間ちかく無駄に時間を過ごす意味はないし、そうしよう。

それにしても、C がおれを信用しなかったことと、Y が気楽に人に声をかけてしまう性格だったことが、これほど重要な情報に結びつくとは。自分ひとりだったら、まったく得られなかった情報だ。やはり、仲間と旅をするのは素晴らしい。

関係ない人にもとにかく「はなす」コマンドを使って話しかけていくと、最初は違うことを答えるけれど二回目には本当に訊きたかったことをしゃべりだすという、ドラクエ的な方法論が、実生活でも大いに役立つのだなあと感心する。

一時四十五分、Cody を出発。WY-120 を北上する。

二時半、WY-286 に乗り換え。

30MPH (48km/h) から 50MPH (80km/h) くらいの速度が中心になる、かなりワインディング。これは二人乗りの Y にはちょっとキツいだろうが、そんなことは気にせずに、どんどん山道を飛ばす。うしろの C がぴったりついてくるので、ついつい速度もあがってしまう。気持ちいい。

コーナーをたくさん抜け、だいぶ Y に差をつけた。山を登りきったところで Y が追いつくのを待つ。あっという間に追いつく。それほど遅れているわけでもない。

三時過ぎ、US-212 に合流。

三時半、工事につかまる。工事を避けて北回りのルートにしたのに、結局は工事で待たされるわけか。すぐ向こう側にモンタナ州との州境が見えている。

US-212: 結局、工事で待たされる

五分後、STOP サインが SLOW に変わって、モンタナ州に突入。

ワイオミングにあるイエローストーンだが、北側はモンタナ州に入っている。政治的な理由だろうと思うが、そんなことはどうでもいい。今日は北から入るのでモンタナから入る。

四時、イエローストーン国立公園のエントランスに到着。やっとついた。しかし、この巨大な公園はここからが遠い。ひたすら園内を西進。

五時、Roosevelt Lodge に到着。まずはキャンプサイトの具合を確認する。

四年前に来た時は、着いた時間がもっと遅かったというのもあるけれど、キャンプサイトは全滅だった。今日も、その可能性はあると思っている。最悪、公園を出てモーテルを探す旅にでる必要があるかも知れないという覚悟はしている。

果たして、ロッジのレジストレーションでキャンプサイトの空きを調べられるかと訊いたら、すべて調べられるという。さっそく調べてもらうと、人気のロケーションは全部埋まっていたが、いくつか空いているところが見つかった。

C が八年前にキャンプした時は、湖の近くのサイトがよかったというので、湖の近くを探してみる。Grant Village に空きがあった。いいぞ、いいぞ。

四年前に訊いたときは、キャンプサイトは早い者勝ちシステムなので予約できないと言われてびっくりしたのだが、今もそうなんだろうか。試しに訊いてみる。すると、「電話で予約できますよ。Grant Village なら、ここにかけて」と言われて電話番号を渡される。素晴らしい。細かいところだけれど、カイゼンされているようだ。

さっそく携帯を取り出し、予約。と思いきや、当然ながら電波は入っていない。まあ、そらそうか。レジストレーションで電話を貸してくるか訊いてみたら、外に公衆電話がありますという。はいっ。

すでに小銭王になっている C から大量にクオーターをもらい、急いで公衆電話で電話をかける。十分くらいそのまま待たされて、ようやく係りの人につながる。

「湖の近くで、大きいハーレーが三台止められて、大きいテントひとつに小さいテントふたつが設営できるサイト、残ってますか?」まるで、急いで言わないと空きがなくなってしまうかのように、全力でまくし立てる。「えーと… ええ、ありますよ。18ドルです」

クレジットカードの番号を伝え、予約完了。やった。最悪のことも想定していただけに、これは最高に嬉しかった。後日予定しているグレーシャー国立公園に行くためには、イエローストーンを二泊できない。イエローストーンの一泊が外だったら、かなり辛いところだった。

宿は確保した。あとは南下しながら見て回るだけだ。

Yellowstone National Park in Wyoming

四年前も見たところ、四年前は見なかったところ、一つずつポイントを回りながらイエローストーンの絶景を楽しむ。

道すがら、ときどき人が群がっているので何かと思えば、エルク、バイソンがたくさんいる。バイソンは相変わらず汚い。

Lake Village を少し行き過ぎてから、インスピレーションポイントに寄ってないことに気づく。だいぶ疲れているとは思うが、東側は観ていないと言っていた Y と H ちゃんだから、一応、訊いてみる。「ちょっと戻る元気ある?」あるというので、少し戻る。

四年前にここに一緒に来た友人は、この少し赤らんだ渓谷を見て、「まるで女性のシンボルのようだ」と形容した。その時、おれは彼の詩的な表現に深く頷いて感銘を受けたのだが、その話をしたら、「この谷ををそんな風に形容できる人だから四人も子供がいるんだな」と、Y と H ちゃんは納得していた。そうなのかも知れない。

Inspiration Point at Yellowstone

いくつか見て回っているうちに、だいぶ日も落ちてきた。けっこう寒くなってきた。

本当はもう少し寄りたいところがいくつかあったのだけれど、「暗くなってきたし、これ以上みても仕方ないね」と Y が言うので、キャンプ場まで直行することにする。

三人でキャンプ場に直行してもらって一人だけで Mud Volcano に寄るという案が一瞬、脳裏をかすめたのだが、だったら一緒に行くと、かえって気を使わせるだけになるかも知れないと思って、言うのをやめた。東側を走れたら必ず Mud Volcano には寄ろうと思っていたけれど、次回の楽しみにしよう。どうせ、いつかまたここには来るし、最初からほとんどのことを諦めるつもりで来ている。

七時過ぎ、Grant Village に到着。まずはテントを設営し、ビレッジに買出しに出かける。チキン、ソーセージ、トマト、たまねぎ、ズッキーニ、ガーリックソルト、ビール、薪などを購入。

さっそく火をおこし、晩飯の準備。

ソーセージには、予定外のチーズが入っていたけれど、これもウマイ。ビールに合いすぎる。ビールは当然 Teton Amber。おれは地ビールしか飲まない主義。

トマトはみんなそのまま食っていたけれど、硬そうだったのでおれは焼いて食ってみた。めちゃくちゃうまい。トマトは焼きトマトに限る。みんな、がまんできずにすぐに食べてしまうからどうしようもない。

四つのチキンのうち、ひとつはホイル焼きにして、三つはそのまま焼いて見る。ホイル焼きにしてみた C のチキンは、ジューシーで最高にウマイ。人のチキンの方が何故かウマイのか、C のチキンに三人が群がり、C は焼いたチキンがウマイと言って食っていた。

こうして火を囲み、ただ焼いただけの晩飯とビールがこんなにもおいしいキャンプとは、なんて贅沢な遊びだろうか。

空を眺めると、天の川があまりにも綺麗に見える。ぼーっと天上を見ていると、流れ星が線を描く。また、天空で異様な光を放ち動き続ける星、人工衛星もいくつか見える。

子供の頃、将来は天文学者になろうと思っていたという父に、星のことをたくさん教わった。夏の夜は、父と外に出て星を眺めて父の話を聞くのが楽しみで仕方なかった。どんな質問にも答えてくれる父は、何でも知っていると思っていた。

そんな父の影響もあってか、一時期、物理学者になろうかと思っていたこともあったおれの星に関するウンチクは、誰にも興味を示されなかったが、まあ、いいだろう。そのうち、子供たちにたっぷりと聞かせてやる。

  • 総合走行距離: 3721.07 マイル (5988.48 km)
  • 今日の走行距離: 326.49 マイル (525.43 km)
  • 最高速度: 92.2 マイル/時 (148.38 km/h)
  • 移動時間: 6時間57分
  • 移動平均速度: 46.9 マイル/時 (75.5 km/h)
  • 最低最高高度: 3671〜9338 フィート (1119〜2846 m)
  • $3.329 x 2.704G = $ 9.00 — 11:55:38 MINCHOW'S SERVICE — Lovell, WY
  • $3.599 x 3.704G = $13.33 16:51:04 TOWER JCT #8 — Yellowstone National Park, WY

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いい旅そうね。最後のあたりが気がゆるむんだから、気をつけて。
ありがとう。おかげで無事に帰ってこれました :-)
オレもブログをつけたんだけど、カルメンのを読んでる方がずっといろんなことを思い出すし、グッと来るモノがあるのがちょっと悔しいw。
でも、こーゆー質の良いモノがここに残ってるってのはすごく嬉しい。

今回は眼鏡だったのでカルメンのウンチクにつきあえなかったけど、今度はレーシックを受けて10倍くらい星が見えるようになって、色々話を聞かせてもらいたい。

  
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