ぼんやりと考えている人

ひろしまなおき (廣島直己)
名前: ひろしまなおき (廣島直己)
住処: シリコンバレー
職業: しがないプログラマ
家族: 愛妻一人、息子一人、娘一人
道具: ハーレー二台、ギター三本
電紙: n at h7a.org

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以前にぼんやりと考えたこと

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05 September '2006 - 20:27 | 単車と旅 Sturgis 2006 (その4)

旅の四日目、八月八日。火曜日。

七時過ぎ、目が覚める。目が覚めて、初めて自分が寝ていたことに気づく。昨夜は、雨は降らなかったけれど代わりに砂が降りつけるという物凄い嵐で、なかなか寝付けなかったのだった。

寝たりた感じがしなかったので、そのまま二度寝することにする。

一時間後の八時、今度は気分よく目が覚める。

外の様子を確認しようと起き上がって見たらと、足元においてあったドライバッグが砂まみれになっているのを発見。なんだこれは。テント内においてあったドライバッグがこのありさまとは。

どんな豪雨でも、洪水にならない限りはまったく問題のないおれのテントだけれど、フライの隙間から砂が上まで舞ってメッシュをすり抜けてきたようだ。メッシュ部分がだいぶ少ない C のテントは、おれよりもかなり軽症だったようだが、それでも砂が入ってきたらしい。メッシュ部分を完全に締め切れるタイプじゃないとモニュメントバレーでは通用しないようだ。

テントの中にあったのに砂まみれのドライバッグ in Monument Valley

テントを洗い、ドライバッグを洗い、顔を洗う。とくに食べるものもないので、「反対側」に向かうことにする。

五分後、「反対側」Goulding に到着。スーパーでマフィンとコーヒーを買い、朝食とする。九時。

懐かしいなあ。

三年前の夏、日本から来た親友二人と Goulding のホテルに泊まった日の翌朝、同じく日本から新婚旅行で訪れていたという男に声をかけられた。

さっさと朝の準備を終わらせて出発したかったおれは、その日本人と親友二人がおしゃべりしているのを尻目に、もくもくと自分の作業を続けた。バイクで旅をしている日本人を見つけて暇つぶしに声をかけてきたのだろうが、相手にしている暇はない。

さて、おれは準備完了だぞ。おまえら、ただでさえ準備がおれよりも遅いくせに、いつまでもくっちゃべってたら出発できないぞ。

そう思って顔を上げたら、つれの一人が言った。「この人もハーレー乗りなんだってさ」

ふーん。それで興味を持って早朝からわざわざ声をかけに来たってわけか。なんにせよ、とりあえず挨拶だけはしておこうと思って近づく。その男の顔を見て、頭の中が真っ白になる。

え゛… こ、この人、誰だっけ?っていうか、誰だっけってってどういうことだろ。おれ、この人、知ってるってことだよな。え???まじで???

相手の男も、おれの顔を凝視しながらクチをパクパクさせている。お互いにお互いを認識しているのに、想定外にもほどがありすぎて、ちゃんと認識できない。

その男は Y だった。

九八年にスタージスで別れて以来の偶然の再会。ありえない。夜の九時から朝の七時までという短い滞在時間で、知り合いに偶然会うなんて、ありえない。しかも、相手は在米じゃない。日本から新婚旅行でたまたま来ていただけなのだ。

あの奇跡の再会から三年。

しかし、Y と一緒にアメリカを旅することになるなんてなあ…

ほんと、人生にはどういうドラマが待ってるのか、さっぱり分からないから面白い。

十時前、出発。US-163 を北上。モニュメントバレーを後にする。

US-163: Monument Valley, Navajo

十時四十分、Bluff にてガスの補給。田舎ではありがちな、カードリーダーの付いてないタイプのポンプ。レジまで行かないといけない。面倒くさい。

が、とりあえず、レバーを上げてみる。動いた。ガスを入れてみる。入った。

カリフォルニアのような都会では、まずお目にかかれないだろうが、こういう田舎ではよくある。セルフサービスなんだけれど、料金はレジで「後払い」という暢気なシステム。システムの盲点を悪用するような人間は、仮にいたとしても滅多にいない。人は信用できる。田舎はいい。

いきなり入れることができる田舎のポンプ in Bluff, Utah

十一時四十分、コロラド州との州境に到達。CO-41 を南下し、US-160 に合流。さらに南下して、正午前にニューメキシコ州に突入。

正午、ニューメキシコ州とコロラド州とユタ州とアリゾナ州の州境に到着。

Four Corners, AZ-UT-CO-NM

四年前に来た時は、気に入った Tシャツの自分サイズが売り切れだったので、女房に買って行った。今日は、あの Tシャツの自分サイズを買って借りを返したい。

まわりの出店を C と二人でのんびりと歩く。インディアンジュエリー系は、とくに女房にプレゼントしたいと思うようなものがもうないので、最初からその手のものは興味なし。と思いきや、リース付きのいかにもインディアン風の可愛いヘアピンを発見。そうか、娘に買ってやらなくては。

どうせだからターコイスの付いてるやつを探すが、なかなか見当たらない。仕方ないので、ターコイスじゃないけれどそれっぽいのをひとつ選んで買うことにする。まわりの出店を全部見てから、外れにあった最後の一件を覗いてみたら、そこにはターコイスのリースのヘアピンがあった。悔しすぎる。

ちなみに、後日、この話を女房にしたら、「だったら二つ買えばよかったのに」と一撃で顎が砕け散った。考え方が違うと、到達できる地平はかくも違うのか。

結局、おれの Tシャツも買えなかったので、借りが増えただけになってしまった。さすがに、もう来ないと思うけれど、きっとそのうちまた来るんだろうと思う。

一時前、出発。US-160 を北上。

一時半、Cortez に到着。おなかも空いたし、暑いし、昼飯を食うことにする。最初に目に入った TacoBell に入る。久しぶり。

C がビーフにしたのでおれはチキンを頼む。ひとつずつ交換。ウマイ。とくに好きじゃないので滅多にメキシカンは食べないけれど、真夏のバイクの旅には欠かせない。

地図を見ながらタコスを食べていたら、前の席に座っている子供がずっとこちらを見ていることに気づく。田舎ではよくある光景。生のアジア人を見るのは珍しいのだろう。そんなにジロジロ見るなと親が言っても、子供は正直。目が離せない。

涼しい店内から外に出るのは勇気がいるけれど、いつまでもこうしているわけには行かない。意を決して出発。二時十五分。

二時半、 Mesa Verde 国立公園に到着。

Mesa Verde National Park, Colorado

Mesa を登っていく途中で雲行きが怪しくなり始めたので、カッパを着ることにする。山の一部で降っているだけだろうし、降ってもすぐに止むだろう。きっと上だけで十分だ。

だが、この後、三時間ほどこの公園内で観光することになるのだが、その間、一度も雨が止むことはなかった。なかなか止まないなあと思ったときには、ジーンズはびしょぬれ。いまさらカッパを着ても仕方ない状態。こんなに雨が降り続くなら、下もはけばよかった。

公園内では、車の人たちは突然の雨に傘の用意がなかったのか、みな、社内にとどまったまま外を眺めていた。だが、おれと C は最初から外にいる状態なので、何の気兼ねもなく、雨の中を歩いてあちこちの遺跡を見て回った。ポイントに来たらバイクを停めて、歩いて、遺跡を眺め、またバイクで進む。

「雨の中をバイクで大変だねえ」と車中の白人に同情されたが、「車の中からだと何も見られなく残念ですねえ」と逆に皮肉る。実際、ほとんどの遺跡は少し歩かないと見えないところにあったので、雨に濡れるのをはばかっている車の中の人たちは可哀想だった。

十分に遺跡を堪能し、山を下り始める。公園の出口を抜けるころには雨は上がっていた。

五時半、US-160 に戻ると空は快晴。夕方なのに、まだまだ暑い。西に向かう。気がつくと、さっきまでずぶ濡れだったジーンズは完全に乾いている。

六時過ぎ、Durango に到着、ガスを補給。

今日は早めに切り上げてゆっくりしたいねと C が妙なことを言う。年なのかな。さすがに四十にもなると体力がだいぶ落ちてるのかも知れない。ただ、Mesa Verde でのんびりしすぎたので最低でもあと二時間は走っておきたい。貯金できなくてもいいけど借金はしたくない。

さて、ぐずぐずしていても仕方ないので、さっさと出発。US-160 を東に向かう。

八時前、Pagosa Springs に到着。

本当はもうちょっと行きたいところだったけれど、South Fork まで走ったら真っ暗になってしまいそうだし、そんなに急がないといけない理由もないし、今日はここまでとすることにしよう。

さくっとモーテルを見つけて、荷物を降ろす。Pagosa Springs Pinewood Inn $69.31、ちょっと高いけど、他にない。

目ぼしいレストランはちょっと高い感じのところしかなかったので、近くにあった安めの中華料理屋に行くことにする。高い金を出してウマイものを食うのはやぶさかではないが、こんな田舎のレストランで旨い物は期待できない。だったら、安い方がいい。

小さな中華料理店のウェイトレスの一人はいわゆる ABC (American-Born Chinese) で、きっと田舎で苦労してきたのだろう、白人客への対応と、われら日本人二人および隣の席の黒人家族に対する対応が、笑えるくらいにあからさまに違う。そんなに愛想を振りまいてどうするんだという感じで白人男たちに接するのに対し、おしゃべりの邪魔をしないで欲しい的にイライラとこちらの注文をとる。ただ、そうならざるを得なかった田舎での生活風景も透けて見えるだけに、なんというか痛々しいというか、とても切ない。

それはそうと、たいしてうまくもないが久しぶりの食事と呼べる食事を堪能。ウマイ。アメリカ全土でこういうマズイ中華料理店をほそぼそと営業してくれている中国人の存在に、心の底から多謝。

九時半、モーテルに戻る道すがら、スタンドに寄り、水を買う。

水を買うだけかと思いきや、C が何かを探している様子。訊くと、風邪薬を探しているという。え?まじで?

C はどうやら風邪をひいたらしい。C がそう言うということは、もう完全に風邪だということだ。前兆はきっと前々から感じていたに違いない。きっと、Y の風邪がうつったのだろう。雨に濡れて悪化したかもしれない。さっさと切り上げたかった理由はこれか。うーむ。とりあえず Advil を買う。

モーテルに戻って携帯を確認すると電波が入っている。さっそくメールを確認すると、子供の写真が届いていた。これが楽しみで仕方がない。こっちもモーテルでくつろいでいる様子をメールする。

C は、よっぽど疲れたのか、薬を飲んだらさっさと寝てしまった。突然、ツインの部屋で一人ぼっちになる。

まだ十時、カリフォルニアは九時。おれはまったく眠くない。

他にすることもないので、部屋の電気を消し、三日ぶりのシャワーを浴びる。忘れていたけれど、綺麗になるってすごく気持ちいい。

風呂から出てドライバッグからパンツを取り出すと、それが最後の一枚だった。ちょうどよかった。パンツをお風呂で洗濯することにする。靴下の方はまだ余裕があったので次の機会にすることとする。C の下着は大丈夫なんだろうか。洗ってあげたくはないけれど、ちょっとだけ心配。

風呂から出て、地図を見ながら明日のルートを考える。明日は Great Sand Dune に寄ってから北上して、Rocky Mountain の手前くらいまで行ければ十分だな。

ウェザーチャンネルで辺り一体の天気を確認。雨はなさそうだ。

明日も楽しみだなあ。
  • 総合走行距離: 1540.60 マイル (2479.35 km)
  • 今日の走行距離: 305.82 マイル (492.17 km)
  • 最高速度: 87.6 マイル/時 (140.9 km/h)
  • 移動時間: 6時間01分
  • 移動平均速度: 50.8 マイル/時 (81.7 km/h)
  • 最低最高高度: 4137〜8404 フィート (1261〜2561 m)
  • $3.489 x 3.027G = $10.56 — 10:52:31 DAIRY CAFE — 3 W. Main St., Bluff, UT 84512
  • $3.429 x 4.338G = $14.88 18:17:00 MINI MART — 2501 Main, Durango, CO 81301

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C、ゴメン。

  
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